すだちがピンチ!生産量減少で旭ポンズも休売へ?新品種「勝浦1号」が救世主になるか

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焼き魚にキュッと搾るすだち。秋のサンマや松茸、刺身、鍋料理にはもちろん、うどんの表面を薄切りのすだちで埋め尽くした「すだちうどん」も人気があります。

関西では、ポン酢の原料としてもなじみ深い存在です。

ところが今、そのすだちが深刻なピンチを迎えています。

象徴的な出来事が、大阪の人気商品「旭ポンズ」の一時休売です。製造元の旭食品は、原材料となる「すだち果汁」の不足を理由に、2026年6月上旬ごろの生産分を最後に「旭ポンズ360ml」「旭ポンズ1800ml」「旭ぶっかけポンズ360ml」を一時休売しました。販売再開時期は現時点で未定です。(旭食品)

関西人にとっては「ポン酢まで作れなくなるの?」と驚かされるニュースでしょう。

いったい、すだちの産地で何が起きているのでしょうか。

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すだちは本当に「なくなる」のか?

まず整理しておきたいのが、「すだちが近い将来なくなる」という話です。

現在もすだちは生産されているため、当然ながら、これは気になりますね。

農水省が公表している将来推計には、農山村の人口減少や高齢化が進み、2045~2050年に農業集落の維持が難しくなる地域が大幅に増えるという予測があります。たとえば農林水産政策研究所は、2045年には「存続が危惧される農業集落」が約1万集落まで増えると予測しています。(農林水産省)

つまり問題は、

「ある年に突然すだちがゼロになる」

という話ではなく、

「生産者と畑が減り続ければ、普通のスーパーでは気軽に買えない果物になってしまう可能性がある」

ということなのです。

実際、民間の生産者側からは、今後さらに生産量が落ち込み、2030年代には「幻の果実」のようになりかねないとの強い危機感も示されています。(CAMPFIRE)

すだち王国・徳島で生産量が減っている

すだちといえば徳島県です。

農林水産省によると、徳島県は国内生産量の9割以上を占める日本一の産地です。

正確には「徳島県以外ではまったく生産されていない」わけではありません。少量ながら他県でも栽培されています。しかし、徳島県のシェアは長年90%台後半に達しており、事実上、日本のすだち供給を徳島一県が背負っているといっていい状況です。(農林水産省)

ここに大きなリスクがあります。

徳島の生産量が落ちれば、他県から補うことが非常に難しいからです。

しかも、すだちの栽培面積は長期的に減少しています。

農水省のGI登録資料によると、徳島すだちの栽培面積は1992年ごろには約660ヘクタールまで拡大しましたが、高齢化などの影響を受け、2017年には397ヘクタールまで減少しました。

かつての6割程度です。

徳島県自身も、すだちの栽培面積・生産量について「平成2年をピークに減少の一途」とし、原因として生産者の高齢化、労働力不足、老木化した園地の増加などを挙げています。

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最大の問題は「実は収穫する人がいない」

すだちは比較的丈夫な柑橘で、暑さにも対応できる植物です。

それなのに、なぜ生産量を増やせないのでしょうか。

大きな理由が人手不足です。

すだちの主産地は、神山町や佐那河内村、勝浦町、上勝町など徳島県の中山間地域です。

こうした地域のすだち畑には傾斜地が多く、大型機械を入れにくいという問題があります。

さらに、露地すだちは8月上旬から9月ごろが収穫の中心です。

一年かけて育てても、収穫期は短期間に集中します。

その間に、人の手で一気に収穫しなければなりません。

高齢の農家にとってこれは大変な重労働です。後継者がいなければ、収穫できる範囲まで畑を小さくするしかありません。

木があるのに採る人がいない。

やがて手入れが行き届かなくなり、老木化し、さらに収穫量が落ちる――。

これが現在、産地で起きている悪循環です。

農水省の事業資料でも、すだちは中山間の傾斜地で栽培されることが多く、「人力中心の作業体系で効率が悪い」ため、労働力が減ると規模縮小につながりやすいと分析されています。

「旭ポンズ休売」はかなり重大なサイン

今回の危機を一般消費者にも強く印象づけたのが「旭ポンズ」です。

旭ポンズは大阪・八尾の旭食品が製造する人気ポン酢で、関西では昔からおなじみの商品です。

ところが2026年、原料となるすだち果汁が確保できなくなり、一時休売に追い込まれました。

単に「今年はすだちが少し高い」という話ではありません。

加工メーカーが必要量を確保できず、長年販売してきた商品そのものを止めなければならなくなったのです。(旭食品)

すだち不足が、

農家

市場

食品メーカー

スーパー

家庭

へと波及し始めたことを意味します。

ポン酢だけでなく、すだち果汁、すだち酒、ドリンク、調味料などにも影響する可能性があります。

実際、2022年の不作時にも、すだち果汁不足によって「すだちサワーの素」や「にごりすだち酒」が一時販売休止になる事例がありました。(本家松浦酒造)

もはや一度だけの異常事態ではないのです。

大好きな「すだちうどん」も消えてしまう?

筆者が気になるのは、人気の「すだちうどん」です。

透き通っただしの上に、薄くスライスしたすだちをびっしり敷き詰めた一杯。見た目にも涼しく、すだちの爽やかな香りと酸味がだしに移る夏の人気メニューです。

もちろん、すだちうどんがすぐに消えるわけではありません。

しかし生産量がさらに減れば、価格上昇や仕入れ難が起こり、飲食店にとって「大量のすだちを使う料理」は作りにくくなります。

一杯に何個ものすだちを使う店ならなおさらでしょう。

将来的には、

「夏になれば気軽に食べられるうどん」

から、

「旬の時期だけ食べられる少しぜいたくな料理」

へ変わってしまう可能性もあります。

そう考えると、すだち危機は決して徳島だけの問題ではありません。

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救世主になるか?新品種「勝浦1号」

そんなすだち産地で期待されているのが、新品種の「勝浦1号」です。

徳島県立農林水産総合技術支援センターが10年以上かけて開発し、2021年に品種登録を出願。2024年3月12日に正式に品種登録されました。(品種情報ポータル)

最大の特徴は、

「緑色が濃く、長期貯蔵しても色が落ちにくい」

ことです。

すだちは緑色の時に収穫されますが、長く保存すると果皮が黄色くなり、商品価値が落ちてしまいます。

ところが勝浦1号は、在来系統に比べて果皮の緑色が濃く、木になっている間だけでなく、収穫後の貯蔵中も緑色が長持ちします。研究では果汁の糖度やクエン酸含量も高い傾向が確認されています。

徳島県が狙っているのは、特に2月から3月上旬の品薄解消です。

通常の露地物は8~9月、貯蔵物は10月から翌年3月ごろ、ハウス物は春から夏に出回ります。その端境期を勝浦1号でカバーできれば、年間を通じた安定供給につながります。

まさに、すだち王国の救世主候補なのです。

ただし、勝浦1号だけですべてが解決するわけではありません。

新品種を植えてから十分に収穫できるまでには時間がかかりますし、そもそも農家が減り続ければ栽培する人がいません。

新品種の普及と同時に、新規就農者の確保、園地の継承、省力化、収穫作業の機械化・効率化などを進めなければ、本当の解決にはならないでしょう。

まとめ|「すだちが消える」は大げさと言い切れない

すだちが明日突然、日本からなくなるわけではありません。

しかし、生産量減少の背景を調べてみると、危機感を持つべき状況なのは間違いありません。

徳島県が国内生産の9割以上を担う「一極集中」。生産者の高齢化。後継者不足。傾斜地ゆえに進みにくい機械化。そして短期間に集中する収穫作業。

その結果が、ついに「旭ポンズ」の一時休売という形で私たちの食卓にも現れました。

筆者としては、すだちをたっぷり使った、あの爽やかな「すだちうどん」が将来、高級料理のような存在になってしまうのは寂しいところです。

希望はあります。

長期保存に強い新品種「勝浦1号」の普及や、新しい担い手の参入、省力化技術などによって産地を立て直す余地は十分あります。

すだちは単なる柑橘ではありません。

徳島の農業を代表するブランドであり、ポン酢やうどん、焼き魚、鍋料理など、日本、とりわけ関西の食文化を陰で支えてきた名脇役です。

「いつでもスーパーにあるのが当たり前」。

その当たり前を次の世代にも残せるかどうか。

旭ポンズの休売は、私たちが「すだちの未来」を考える大きな警告になっているのかもしれません。

 

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