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2026年8月19日、KDDIは子会社が運営するフードデリバリーサービス「menu」を、9月30日で終了すると発表しました。サービス終了後は運営会社menuの解散・清算も予定されています。KDDIは理由として、フードデリバリー市場を取り巻く「競争環境の変化」や今後の事業見通しなどを挙げています。
menuは日本発のフードデリバリーサービスとして知名度を高め、KDDIとの連携によって事業を拡大してきました。それだけに今回の終了は残念ですが、このニュースから見えてくるのは、一つのサービスの苦戦だけではありません。
現在、日本のフードデリバリー業界そのものが、大きな転換点を迎えています。
menuだけではない 相次いできたフードデリバリーの撤退
振り返れば、日本のフードデリバリー市場では、これまで多くの企業が参入しては撤退してきました。
foodpanda、DiDi Food、Chompyなどが日本市場から姿を消し、2026年3月4日にはフィンランド発のWoltも日本でのサービスを終了しました。
そこへ今回、menuの撤退が加わったことになります。
新型コロナ禍では外出自粛を背景にフードデリバリー需要が急増しました。自宅にいながらスマートフォン一つで飲食店の料理を注文できる便利さが広く知られ、多くの企業が市場へ参入しました。
しかし、コロナ禍が落ち着いたからといって、フードデリバリーそのものがなくなったわけではありません。市場については今後も一定の成長を見込む予測があります。
つまり、「需要がなくなったから撤退している」という単純な話ではないのです。
問題は、その市場で利益を出し続けることが非常に難しいことにあります。
フードデリバリーはなぜ儲けるのが難しいのか

イメージ画像です
フードデリバリーは、一件注文が入るたびに料理を店から受け取り、配達員が利用者の自宅まで運ばなければなりません。
配達員への報酬、システム開発費、決済費用、広告宣伝費、クーポンやキャンペーン費など、さまざまなコストが発生します。
しかも利用者にとっては、Uber Eatsでも出前館でもmenuでも、基本的な目的は「料理を届けてもらうこと」です。
サービスごとの差別化が難しいため、最終的に利用者を獲得するための大きな武器となるのが「価格」と「加盟店数」「配達の速さ」です。
しかし価格を下げれば、当然ながら運営会社の収益性は悪化します。
ここにフードデリバリー事業の難しさがあります。
Rocket Now登場で「高いデリバリー」が変わり始めた
現在、この価格競争をさらに加速させている存在が「Rocket Now(ロケットナウ)」です。
Rocket Nowは送料・サービス料無料を前面に打ち出しています。公式サイトでも「いつでも、何度でも制限なく送料とサービス料を無料」としています。
2025年に日本でサービスを開始した後、急速に利用者を増やし、2026年6月には累計600万ダウンロードを突破したと発表しました。さらに1万店以上が店頭と同一価格の商品を提供しています。
これまでフードデリバリーでは、
「店で食べるより商品が高い」
「さらに送料やサービス料がかかる」
という点が大きな弱点でした。
例えば店頭なら1000円程度の食事でも、デリバリーでは商品価格の上乗せや手数料によって、最終的な支払額がかなり高くなることがあります。
便利だけれど高い――。
このイメージが、フードデリバリーの日常利用を妨げてきた最大の壁の一つだったとも考えられます。
Rocket Nowは、そこを真正面から突いてきたわけです。
Uber Eatsと出前館も「店頭価格」へ
当然、既存大手も動いています。
Uber Eatsは2026年3月20日から、全国約1万8000店舗でアプリの商品価格を実店舗と同じ価格にする取り組みを始めました。対象店舗については順次拡大する方針です。
出前館も同年3月から「お店価格で出前館」を全国展開。6月1日時点では対象店舗が約2万1000店舗を突破し、そのうち1万6000店舗以上で全商品を店頭と同じ価格で注文できるとしています。
さらに出前館は、対象となるシェアリングデリバリー店舗で送料無料施策も実施しています。
ここから分かるのは明らかです。
フードデリバリー業界の競争は、
「どれだけ便利か」から「どれだけ安く使えるか」へ
大きく移り始めています。
今後はUber Eats・出前館・Rocket Nowを中心とした競争になるのか
Woltが撤退し、さらにmenuも終了することで、日本のフードデリバリー市場はプレイヤーが一段と絞られてきました。
今後はUber Eats、出前館、そして急成長しているRocket Nowなどを中心に競争が進む可能性が高そうです。
ただし、ここで重要なのは「最も安い会社が勝つ」とは限らないことです。
送料を無料にし、商品価格を店頭と同じにすれば、利用者にとっては魅力的です。しかし、そのコストを誰が負担するのかという問題は必ず残ります。
運営会社なのか、加盟店なのか、それとも別の収益源で補うのか。
価格競争が行き過ぎれば、サービスを提供する側が疲弊します。menuなどの撤退が続いているだけに、単純な値下げ競争だけでは持続可能なビジネスにはなりにくいでしょう。
そのため今後は、「安さ」に加えて、別の方法で収益を作れる企業が強くなると考えられます。
フードだけではなく「生活インフラ」へ
もう一つ注目したいのが、フードデリバリーの役割そのものが変化していることです。
今後、デリバリーアプリは「料理を運ぶアプリ」だけではなくなる可能性があります。
食品や日用品、スーパーの商品、コンビニ商品などを届ける即時配送サービスへと広がれば、一人の利用者がアプリを使う回数は増えます。
さらにサブスクリプション、広告、加盟店向け販促、データ活用など、配達手数料以外の収益源を伸ばすことも重要になります。
利用者から高い送料を取らなくても、別の場所から利益を得る仕組みを作れるか。
これが今後のフードデリバリー企業の勝敗を分けるポイントになりそうです。
「便利だけど高い」から「普通に使える」サービスへ
menuのサービス終了を見ると、「フードデリバリー市場は縮小している」と感じるかもしれません。
しかし実際には、少し違うように思います。
起きているのは市場そのものの消滅ではなく、プレイヤーの淘汰とビジネスモデルの転換ではないでしょうか。
コロナ禍では、多少料金が高くても「家まで届けてもらえる」こと自体に大きな価値がありました。
しかし現在、消費者はよりシビアです。
「便利なのは当たり前。そのうえで、いくらなのか」
を見るようになっています。
Rocket Nowの送料無料・サービス料無料、Uber Eatsや出前館の店頭価格への取り組みは、その変化を象徴しています。
これからは「デリバリーだから高い」という常識が崩れていくかもしれません。
一方、その裏側では各社が厳しいコスト競争を強いられます。十分な注文量を確保し、配送を効率化し、加盟店と配達員を維持しながら利益を出せなければ、巨大企業であっても生き残ることは簡単ではありません。
menuの終了は、その現実を改めて示したニュースともいえます。
フードデリバリーは「ブームの終わり」を迎えているのではなく、安さと利便性が当たり前になる次のステージへ進み、その過程で大規模な淘汰が起きているのでしょう。
数年後、私たちはフードデリバリーを「ちょっと贅沢なサービス」ではなく、外食、自炊、テイクアウトと並ぶ日常的な食事の選択肢として使っているかもしれません。
その未来を実現できるのは、単に値下げを続けた企業ではなく、安さを維持しながら利益を生み出せる仕組みを作った企業なのだと思いますね。


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